今回3回目となる企画。
「海外への一歩をつくる」をコンセプトに、
日本だけにとどまらず、
せかいで暮らす人のインタビューをお届けしたいと思います。
「海外への一歩をつくる」コンセプト
この企画は、
海外にチャレンジしたい方の
「海外への一歩をつくる」ことを目的としています。
「移住したい」「留学したい」「海外でチャレンジしたい」
と考えている人もいると思いますが、
移住やキャリア、今後の生活などに対する疑問や不安で
なかなか行動できない方も多いのではないでしょうか。
わたしもその一人でした。
そんな疑問や不安を払拭するには、
経験者の話を聞くのがいちばんかなと思い、この企画を始めました。
この記事を読んだ方が、
海外へのチャレンジに向けて一歩踏み出すことができればと思います。
インタビュー3人目は、
「アジア最後の桃源郷」とも言われるラオスから。
Youtube ”Sabaidee Channel”(サバイディーチャンネル)の
小嶋さん(写真左)です。
2013年東京外国語大学ラオス語学科卒業。
大学在学中に約1年間ラオスでホームステイを経験。
卒業後は商社で1年、外資系金融機関で2年半勤めた後、
他社でラオス駐在のポストを得て人材業界へ転職・ラオスのビエンチャン駐在。
日本へ帰任命令が出たが、ラオスに残ることを決意して転職。
現在はラオス第二の都市・パクセー在住。日系企業で勤務。
同じくラオス・パクセー在住のあずまさんとコンビでYoutube活動を行っており、
”Sabaidee Channel”でラオス現地の景色やラオスの人々の生活を発信中。
Youtube: Sabaidee Channel
Twitter: @ChannelSabaidee
email: kthirtya*yahoo.co.jp (*を@に変えてください)
ラオスのパクセーでご活躍される小嶋さんに、
ラオスの魅力や生活の様子、
これまでの小嶋さんの経験を聞いてみました!
自給自足のラオス生活へのきっかけ。
さらら:
ラオス語を勉強されている方に初めてお会いしました。
東京外大といえば20以上の専攻言語があると思いますが、
その中からラオス語を選んだ理由は何ですか?
小嶋さん:
珍しい言語を勉強したいと思っていました。
いろいろある選択肢の中でも
「ラオス」については国自体の存在もほとんど知らなかったので、
ラオス語を選びました。
さらら:
ラオスとタイって地理的に近いですが、
言語も共通点なんかはあるんでしょうか?
わたしはタイ語はまだまだほとんど分からないのですが、
Sabaidee Channelにあるラオス語講座とか
ラオス人のみなさんが話している動画など見ていると、
タイ語で聞き覚えのある言葉がたくさん出てくるんですよ。
小嶋さん:
言語としては90%くらい同じなんじゃないでしょうか。
タイの東北部・イサーン地方の言語とはほとんど同じです。
ラオス人はタイのドラマをよく見るので、
タイ語を読む、聞く、話す、というのはかなりできますよ。
タイ語を書くのはちょっと難しいようですが。
逆にタイ人・特にバンコクのタイ人は
ラオス語を聞いて理解するのは少し難しいかもしれません。
さらら:
日本人にはあまりなじみのない珍しい言語だし、
日本でラオス語を勉強できるのは東京外大だけだそうですね。
ラオス留学などもされましたか?
小嶋さん:
ラオスとカンボジアの国境近くの村に
1年弱ホームステイをしました。
「星になった少年」という象使い師の映画を見て
自分もなりたいと思い、
その1週間後には象使い師になれるラオスの村を訪問していました。
さらら:
映画を見て、その1週間後に・・・?
小嶋さん:
そうです。
荷物を準備して、飛行機のチケットをとって、現地に飛び込みです。
現地に行ってから居候させてくれる家を探してまわったけど
断られ続けて。
最初のうちはお金を払って
住まわせてもらったこともあります。
家事や仕事の手伝いをがんばって、
そのうち認めてもらえるようになりました。
電気も水道もガスもない自給自足の村でしたが、
そこでの生活はすごく印象的でしたね。
肉はほとんど食べない生活でしたが、
久々に食べた肉がキツネの肉で
それがめちゃくちゃ美味しかったです。
さらら:
象使い師の免許も実際に取りましたか?
最近は象使い免許を取る旅行者も多いですよね。
小嶋さん:
はい、取りましたよ。
ラオス語で筆記と実技の講習を受けました。
旅行者の方などが受ける象使い講習は外国人向けで
英語で受けられるんですけど、
実はそれとは違う資格なんです。
わたしがラオス語でとった象使い師免許は
ラオス政府も認める国家資格なんですよ。
さらら:
現地で宿探し、自給自足の田舎暮らし、
かなりハードな印象を受けるラオス生活のお話ですが、
小嶋さんはラオス生活は気に入られたんですね。
大学卒業後は、ラオスとの関わりはありましたか?
小嶋さん:
大学卒業後は日本で商社1年、
外資系金融機関で2年半勤めましたが、
ここでの仕事はラオスとの関係は一切なかったです。
ホームステイ時代のラオス生活の印象がずっと強かったので
いずれはラオスに住もうと考えてはいましたが、
まずは働いてお金を貯めることを優先しました。
ラオスで働きたいとかラオスに関わる仕事をしたい
という希望は当時はなかったです。
ただやはりストレスを抱えた時なんかは、
ラオスの生活を思い出しましたね。
転職、日本からラオス・ビエンチャン駐在へ。
さらら:
その後、転職してラオス駐在とのことですが、
きっかけは何だったんですか?
小嶋さん:
その頃勤めていた外資系金融機関を辞めて
アメリカに行ってみたり勉強してみたりと、
1年ほど仕事をしなかった時期があるんです。
そのタイミングで後輩が経営していた人材系の会社で、
ラオス駐在しないか?と話をもらったのがきっかけです。
さらら:
ラオス駐在では、
具体的にはどんなお仕事をしていましたか?
小嶋さん:
日本で働きたいラオス人に日本語を教えて、
日本の人手不足の会社に紹介する事業をしている会社でした。
その立ち上げでラオスの首都ビエンチャンで働いていました。
さらら:
日本で働きたいラオス人は多いですか?
「日本ブランド」だったり、
日本人に対する印象というのは好意的なんでしょうか?
小嶋さん:
たとえば車は日本車が多いし、
日本製品人気というのはありますよ。
日本・日本人に対しても好意的だし、
日本文化好きのラオス人もけっこういます。
ただ彼らが日本で働きたいというのは
第一にはお金が目的である場合が多く、
家族代表・村代表で日本で稼ぐというような感じです。
日本と中国と韓国の区別があんまりついていない人も
なかにはいると思います。
「ラオスにいられないなら働く意味はない」 現地採用・パクセー移住へ。
さらら:
その会社も退職されて、
今は現地採用としてラオスで働いていらっしゃいますよね。
これは何がきっかけだったんでしょうか?
いまはどんなお仕事をしていますか?
小嶋さん:
ビエンチャン駐在の時は
日本の会社から派遣された駐在員という立場なので
日本の都合で動く必要があり、
会社に「日本でラオス人受入れの営業をしてくれ」
と日本への帰任を言い渡されました。
でも「ラオスにいられないなら働く意味はない」
と思って退職、今の会社に転職しました。
パクセーには日系企業が集まる経済特区があるのですが、
今はそこにあるコンクリート会社で経理や総務の仕事をしています。
さらら:
日本の企業からの駐在だとだいたい任期が決まっていて、
数年で日本に帰る前提になりますよね。
一方、現地採用では日本での所属はなくなって、
完全に生活の軸足がラオスに移ることになると思いますが、
特に不安はなかったですか?
小嶋さん:
そこには全く不安はなかったですね。
むしろ日本に帰るのが嫌でした。
日本だとすべてのことに少しずつストレスを感じる気がします。
それから、生活の軸が完全に仕事になることが多いじゃないですか?
ラオスに住む不便ももちろんあるけど、
仕事のストレスというのは少ないし、
やはり日本よりラオスで暮らしたいと思います。
さらら:
今回「パクセー」という都市の名前を初めて聞いたのですが、
パクセーの町の様子や生活について教えてください!!
娯楽とか、食事はどんな感じですか?
小嶋さん:
パクセーはラオス南部にある都市です。
日本人はあまりいなくて、10人くらいですね。
日系企業の駐在員やJICAの青年海外協力隊、
あとは自営業の方などです。
JICAの協力隊は教師の育成や医療、農業の分野等に
関わっているようです。
電車やバスはなく、移動はバイクか車。
日本にあるような娯楽もほとんどなくて、
街に映画館が1つあるくらいですね。
ショッピングセンターとスーパーマーケットが1つずつ。
1つずつしかないから、
街の人ほぼ全員がそこを使っています。
パクセー唯一のショッピングモール Friendship mall。
日本食レストランは日本人経営の店が1軒。
イタリアンや韓国料理屋もおいしいところがあります。
日本の調味料もパクセーで買えるので、
日本食を作ることもできます。
でもマクドナルドはないですよ。
パクセーに、じゃなくて、
そもそもラオスにマクドナルドはありません。
医療インフラがあまり整っていない点は少し不安ですね。
英語が使える病院はないし、医療レベルも十分ではないので、
大きな病気やけがをしたらタイに行く必要があります。
さらら:
わたしが住むバンコクは、外食も日系病院も、
日本人向け娯楽(カラオケなど)もあって
ほとんど日本と変わらないのですが、
パクセーは日本での生活とは大きく違いそうです。
おっしゃるように医療面での不安とか
不便なこともあるかと思いますが、
日本帰任も断ってラオスに住まわれていますよね。
小嶋さんはラオスのどんなところに魅力を感じていますか?
小嶋さん:
ラオスは時間の流れがゆっくりなところが好きですね。
一方でラオスはまだまだ経済発展している途中の国なので、
ラオスがどんどん変化していくのを見ることができる。
すごく楽しいですよ。
例えば、わたしがラオスにいる約3年間で
車もバイクも建物も増えて、
道路が整備され、街灯が設置され、
人もお金も大きく動いているのを実感しています。
3年前には携帯電話を持っている人は少なかったけど
今では大人も子どももスマホを持っていますね。
さらら:
逆にラオスでの生活や仕事で苦労したことはありますか?
小嶋さん:
ラオス人は人柄はすごくいいのですが、
仕事となるとスタンダードが違うので大変です。
時間にルーズというのはラオス人もあります。
製造業の会社では時間、納期遵守が大事なんですけど。
あとは読み書きできない人がいますね。
書類を使って説明するとか、
書類を作ってもらうことはできないので、
その人の能力でできる仕事を任せる、
ということになります。
ラオス・パクセーでのYoutube活動と将来の夢。
さらら:
小嶋さんは、同じくラオス・パクセー在住のあずまさんと
Youtube “Sabaidee Channel”を運営されていますよね。
わたしが今回お声掛けしたのもこのYoutubeがきっかけですが、
なにか始めたきっかけとかはあるのでしょうか?
小嶋さん:
さっきも言ったように、パクセーには娯楽が少ないんです。
だったら自分で何か面白いものを作ればいいと思って、
ビエンチャン駐在時代に知り合ったあずまさんと2人で
Sabaidee Channelを始めました。
今は2人ともパクセー在住で、
パクセーの人々の生活や現地の景色を撮影しています。
例えばラオスのローカルマーケットでの買い物の様子や、
観光名所の紹介、2人でラオス移住の話なんかもしています。

さらら:
Youtubeでの発信活動を通して、
何か達成したい目標や将来の夢はありますか?
小嶋さん:
1つは、ラオスの認知度向上を目標にしています。
留学や旅行、仕事で来る人に役に立つラオス情報を
発信していきたいと思っています。
もう1つはラオスの教育レベルの底上げです。
ラオスにはまだまだ読み書きのできない人もいるし、
国立大学の数学科でも分数の計算ができない学生がいます。
ラオスは色んな民族が集まった国であり
民族によって使う言語が違うので、
統一された国語の教科書もありません。
ラオス第二の都市と言われるパクセーですら、
中心部を少し離れると読み書きできない人がいます。
だから、Youtubeからの収益で
ラオスの子どもたちが無料で勉強できるウェブサイトを作って、
本人の努力次第で将来の選択肢を増やすことができる、
ということを伝えたいと思っています。
また、日系企業の誘致やラオスを支援する団体のアテンド等
ビジネスにつなげることも考えています。
これまでは日系企業、特に製造業は
タイに拠点を置く場合が多かったですが、
最近はタイプラスワンとしてラオスも注目されています。
ラオスは人件費がより安く、
手先が器用でまじめな人が多いので、
製造拠点を置くのには適しているでしょう。
この流れの中で今後、
日系企業がラオスと仕事をする場面が増えると思いますが、
ラオス在住でラオス語を使えるという立ち位置を活かして
企業の対ラオスの業務サポート、委託をやっていくつもりです。
さらら:
最後になりますが、
小嶋さんから読者のみなさんへ何かメッセージをお願いします。
小嶋さん:
ラオスは自然は豊かだし、ラオス人は温厚だし、
ゆっくりのんびりした素敵な国です。
もちろん不便なことも多いですが、
わたしにとってはストレスを感じず生きられる場所です。
いきなり移住はハードルが高いかもしれませんが、
ラオス旅行も本当におすすめです。
日本で毎日仕事に追われて
疲れてしまっている方もいるかもしれませんが、
そういう方はぜひ一度
コロナがおさまったら息抜きに、
「何もしないこと」をしにラオスに来てみてください。
あとがき
「映画を見た1週間後にラオスへ飛び込み」
「ラオス移住への不安はまったくなかった」
と勇気のいるできごとのはずなのに
飄々と話をされる小嶋さん、
大変力強い方でした。
また、わたしがラオスに対してあまり知識がない中、
ラオスの教育システムの問題や識字率等の現状、
パクセーの街・特に医療インフラの状況など、
小嶋さんにお話しいただき、
びっくりするとともに新しいことを知れる良い機会でした。
日本やバンコクにいてはきっと遭遇することのない、
知らないままで通り過ぎてしまいかねない話でした。
ただし、ラオスは問題だらけの国というわけではなく、
経済成長率約6%(コロナ発生前に発表された数字)、
人口構成は若年者層が多く、
タイプラス1として注目される国です。
これまでタイに拠点を置いていた日系製造業が
ラオスに拠点を作るとなると、
今後ラオスと接点を持つ日本人も増えるはず。
そして、わたしもぜひタイにいるうちに
隣国ラオスをぜひ訪ねたい、
小嶋さんのおっしゃるラオスの魅力を見てみたいと思います。
Youtube: Sabaidee Channel
Twitter: @ChannelSabaidee
email: kthirtya*yahoo.co.jp (*を@に変えてください)
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