vol126 軍政に異を唱えるタイラッパーRap Against Dictatorship

タイで暮らす

1970年代にアメリカで生まれたと言われるラップ音楽。

メロディラインを持たない独特な節回し、リズミカルな押韻などが特徴的で、
日本でもZeebraや般若といったラッパーが活躍しており、
またJ-POPに一部ラップが取り入れられることもあります。

このラップミュージック、
タイにはタイ政府が目をつけるほどのラッパーグループがいるのです。

その名もRap Against Dictatorship

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タイのラッパー集団・Rap Against Dictatorshipとは。

タイのラップグループ、Rap Against Dictatorshipは2017年、
社会や政治に関心を持つラッパーたちによって結成されました。

彼らに注目が集まるきっかけとなったのが、
2018年にリリースした曲”Prathet Ku Mee”。

タイ語の曲なのですが、
歌詞の英訳を一部ご紹介します。

The country that government is untouchable
The police use law to threaten people
Though you’re enlightened, you have to pretend to sleep
Even you don’t wanna live, they will force you to live
The country that people read less, especially the leader
The country that asks you to stay quiet or stay in jail
The country that corruption’s always safe for the rich
Which is my country
Which is my country

引用元:Genius.com

「政府には触れてはならない、
警察は人々を脅迫するために法を利用する、
あなたに何か考えがあっても
あなたは寝ているふりをしなければならない・・・
(中略)これがおれの国だ。」

一部和訳してみましたが、
タイ語が分かる方はタイ語の歌詞を、
分からない方も英訳を全部読んでみてください。
明らかに政府批判の歌です。

しかも彼らのグループ名が、
Rap Against Dictatorship(反独裁主義のラップ)。

 

この曲がリリースされた2018年当時、
タイは元陸軍司令官のプラユット首相率いる軍事政権。
2014年に軍事クーデターでインラック政権を倒し、
プラユット首相は独裁的地位にありました。
(2019年に民政復帰。)

彼らの歌はこうした政府や軍部を批判する歌でした。
それも風刺や暗喩ではなく、
誰が見ても政府への批判と分かる歌です。

また、曲の後半にはタマサート大学虐殺事件(*)を彷彿とさせる映像が流れ、
曲の歌詞だけでなくMVも衝撃的な内容になっています。

(*)1976年10月6日クーデターの中で起きた事件。
1973年、タノーム独裁政権への抗議と民主化要求のデモが学生や市民の間で始まり、
タノーム首相らは退陣、海外亡命。
1976年にタノーム首相が亡命先から強制帰国すると、
断罪を求める左派学生や市民活動家が集まり抗議集会をする。
1976年10月4日にタマサート大学で行われた抗議集会を警察や右派集団が襲撃。
抗議集会に参加していた学生たちが射殺や爆死、首つりなどの残虐な方法で殺された。

Prathet Ku Meeは法に違反する?タイ政府の反応。

明らかな政府批判の歌を、
タイ政府が黙って聞いてはいませんでした。

タイ警察が
「歌の内容は国のイメージを損なうものであり、
コンピューター関連犯罪法(the Computer Crimes Act)に違反する恐れがある」とし、
Rap Against Dictatorshipのメンバーと制作チームに対して
法的措置をとる可能性がある、と示唆しました。
Police threaten young rappers (Bangkok Post)

 

この政府および警察の対応がきっかけで
彼らの歌はかえって注目を集めることになり、
2018年10月22日にYoutubeにアップロードされたこの曲は
約1週間で再生回数2100万回を突破しました。

結局「この歌は法に抵触せず、法的措置をとることはない」
とタイ政府が発表しましたが、
もちろんこの歌はプラユット首相の目にもとまっており
彼らのグループ名や曲名には触れないものの
「ソーシャルメディアに気を取られるな。
自分自身で判断しなさい。」とコメントをするほどでした。

Police back down on ‘Prathet Ku Mee’ threat(Bangkok Post)

Rap Against Dictatorshipの現在の活動

Prathet Ku Meeが大きく取り上げられた後も彼らは音楽活動を続けており、
2019年には”Peace” や”250 So Plo”、
2020年には”Sotus”などの歌をリリースし、
音楽を通じて大胆にも政府や社会に立ち向かい続けています。

 

 

今年に入ってタイではたびたび反政府デモが起こり、
不敬罪の存在するタイで王室批判まで始まっています。

彼らのYOUTUBEチャンネル登録者数は59.1万人(2020年10月時点)。
その数だけ見ても彼らの持つ影響力は大きく、
タイ政府にとっては無視できない存在なのではないでしょうか。

 

その証拠に、と言っていいかもしれませんが、
タイ政府による”Prathet Ku Mee”へのアンサーソングが存在します。
”Thailand 4.0”です。
これについては次回以降の記事でシェアします。

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